日本への農業、民族、原語の伝搬

Triangulation supports agricultural spread of the Transeurasian languages
Robbeets et al. 2021
Nature 599, pages616?621 (2021)

 

ユーラシア大陸の言語、すなわち日本語、韓国語、ツングース語、モンゴル語トルコ語の民族の起源と初期の分散について、農耕牧畜に関する語彙、考古学データ、古代ゲノムコレクションの3つによって推理した論文である。

 

トランスユーラシア諸語の起源は、新石器時代東北アジアにおけるキビ栽培の開始と初期のアムール遺伝子プールにまで遡ることができることが示された。これらの言語の伝播には、農耕や遺伝子の散布と同じように、大きく分けて2つの段階があった(図4)。新石器時代前期から中期にかけて、アムール関連遺伝子を持つキビ農民が移動し、黄河、西ユーラシア、縄文人と混血し、稲作、西ユーラシアの作物、牧畜が農業に加わった。

 

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図4 東北アジアにおける言語、農業、遺伝子の拡張の統合
アムール族の祖先は赤、黄河の祖先は緑、縄文人の祖先は青で表示されている。赤い矢印は、新石器時代にキビを栽培する農民が東へ移動し、朝鮮語ツングース系言語をもたらしたことを示している。緑の矢印は、新石器時代後期から青銅器時代にかけて稲作が盛んになり、朝鮮半島から日本へ日本語族言語(japonic langage)がもたらされたことを示している。

 

9千年紀前後の西遼地域におけるキビ栽培の開始は、実質的なアムール関連の祖先と関連付けることができ、トランスユーラシアの祖先の言語社会と時間的・空間的に重なっている。
 9~7千年前のキビ栽培によって人口が増加し、西遼地域において分かれたサブグループが形成され、アルタイ語話者と日韓語話者の接続性が断たれた。

また、西遼地域から沿海州にアムール語の祖先が、沿海州から韓国にアムール語と黄河の混血祖先が持ち込まれることになった。著者らが新たに分析した韓国のゲノムは、日本国外に縄文人関連の祖先が存在し、混血していることを示している。

 3300年前頃、遼東-山東地域の農民が朝鮮半島に移住し、雑穀農業に米、大麦、小麦を追加した。この移住は、韓国の青銅器時代のサンプルに含まれる夏家店上層人と推定される遺伝的要素と一致し、日本語と朝鮮語の間の初期の借用に反映されている。考古学的には、夏家店上層文化に限定されることなく、より広い遼東-山東地域の農業に関連づけることができる。

 この農業パッケージは3千年前に九州に伝わり、本格的な農耕への移行、縄文系から弥生系への遺伝的転換、日本語への言語的転換を引き起こした。さらに、琉球列島南部の試料から、縄文人の祖先が宮古島まで南下していたことを証明した。この結果は、台湾からのオーストロネシア人集団の北上というこれまでの想定を覆すものである。また、韓国のヨクチドで発見された縄文人のプロファイルと合わせて、縄文人のゲノムと物質文化は必ずしも重なり合っていなかったことが示された。